高校生、大学生のための「小論文」「論文」の手引き

2021年8月5日木曜日

高校生 大学生 大学入試

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おかげさまで、先日好評を得ました記事


につづき、今回は高校生の「小論文」から、大学でも通用する「論文」の書きかたについてまとめます。

大学受験の小論文試験から、大学1~2年生の方はレポートなどの参考にしてみてください。
(卒業論文は、もっと本格的な内容が必要になると思うので、大学の先生に教えてもらってくださいね)

はじめに


論文を書く時の「ルール」というものがあります。
これを知っていると知っていないでは、文章の書きかたが全然ちがってきます。

読む側(採点する教員側)は文章を読めば、その論文のルールを知っているか、知らずに書いているか、ほぼ確実に見抜くことができます。

高校や大学で、実はこういったルールについては学んでいるはずですが、徹底できていない人を想像以上に多く見かけます。

つまり、論文ルールに沿って書くというだけで、周りにかなり差をつけることができると思います。さっそく実践してみましょう。

記事を読むときの注意点!


  1. ここで紹介するのは、教室長が大学時代に学び、実践してきた形式です。ただ、これが絶対というのではなく、論文ルールには学問・学部によっていくつか流派があります。
  2. パソコンのWord原稿で、横書きの場合のルールを紹介します。手書き、縦書きの場合は適宜調整してください。


論文の大まかな構成


論文を5つの章に分ける

  1. 冒頭(はじめに)・・・「この論文で何をしようとしているか」を提示する。
  2. 先行研究・・・そのテーマに関する、それまでの研究状況をまとめる。参考文献や引用文献を多数集めること。
  3. 問題設定・・・「2.先行研究」を踏まえて、何が今現在の研究課題なのかを書く。
  4. 考察・・・「3.問題設定」で挙げた研究課題を検討する。一番オリジナリティを出してほしい部分。あと、根拠をつけるように。
  5. 最後(おわりに、まとめ)・・・最終結果として何がわかったか、そして、何がまだ課題として残されたかを書く。

最初に「この論文では何をやろうとしているのか」を書き、最後に「この論文で何がわかったか」を書きましょう。
これがないと、その論文が何を伝えたいのかがわかりません。

次に、どうして先行研究の整理をするのか?という疑問にお答えします。

1つ目の理由は、自分が解明しようとしていることが、実は過去に発表されていた、ということのないようにするためです。
自分がやっている分野の先学(学問上の先輩)に失礼のないように、論文を書くときには必ずしなければならない作業だと思ってくださいね。

2つ目の理由は、自分がやっている分野で、どれくらいの種類の言説(仮説)があるか、何が解明されているか、何が解明されていないか、何が研究課題として残されているか・・・を明確につかむためです。
言いかえれば、次の「問題設定」を行なうための作業だと言えます。

論文の最後(「まとめ」「おわりに」)が、論文の冒頭で書いた問題提起に対応していない結論を書かないように気をつけましょう。
また、大風呂敷を敷いた「今後の課題」設定をしたり(いつそれが解明されるの?というレベルの課題)、希望的観測(こういう風になれば良いな)を書いてしまうことがありますが、避けたいポイントです。


文章の書式ワンポイントアドバイス


・「です、ます調」ではなく、「だ、である調」を採用。

・引用は「 」を付け、必ず出典(参考文献)を書く。長い引用文になる場合は、行を改めた上で(1行空けておくと見やすい)、各行を1文字ずつ下げて載せる。

・引用文の中に、さらに引用文がある場合(引用した人が、さらに別の人の文を引用している場合)は、そこの部分を『 』にする(基本的に「」の中にさらにある「」は『』に変えておく)。引用文は、かならず原文に忠実に引用する。

・句読点やカギカッコ以外の符号は使わないようにする。「?」や「!」など。

・とある箇所では漢字になっているのが、別の箇所では平仮名になっている、といった論文内での文字の不一致は避ける。

・「~こと」「~ため」「~など」「~ほど」「~できる」などの表現は、漢字にせず平仮名で統一する(「漢字をひらく」と呼ばれる行為で推奨されています)。

・一文は多くても50字程度までが望ましい。読点は、20字を越える文章なら1つは打っておきたい(もちろん例外あるので目安)。一文が長くて読点が少ないと読みにくくなる。1文にあまり多くのことを盛り込まず、簡潔にしたい。

・数字・アルファベットは全角でなく半角で。

・論文の中で人物名を出すときは、基本的に敬称を略してOK。「~氏」もアリだが、「氏」を最後に付けるとそれも名前の一部に見えてしまう人や、名前が「氏」で終わる人もいるのでご注意。文末に謝辞(お世話になった人に感謝の言葉を書くこと)を付ける場合は、そこだけ敬称や「です・ます調」にする人が比較的多い。

・論文はできる限り第3者の立場で書かれるべき性質を持つので、主観的な表現は使えない(美しい、偉大な、立派な、など)。抽象的な用語を使う場合は、自分なりの定義をしっかり定める。軽くその定義を書いてくれるとなお良い(辞典に準拠する場合は不要)。

参考文献の書きかた


・論文名は「 」、書籍名は『 』を使って表す。

・書籍のタイトルだけを参考文献に挙げている場合がよくあるが、書籍内の1節や、1項目だけを参考にしているだけなら、参考文献にはその項目名と、何ページを参照したのかまで記す。
(例)国史大辞典の「壬申の乱」の項目だけを参考としたのに、参考文献に『国史大辞典』とだけ書くと、あなたは国史大辞典を全部読んで全部の内容を参照したことになる(実際はそうではないはず)。また、複数の筆者が分担して書いた書籍の場合、誰が書いた文章を参照しているのかがわからなくなる。

・参考文献を書くときの情報(書誌情報)は、次の5つが基本。
  1. 論文名・項目名・書籍名
  2. 筆者名・編者名
  3. 発行所名(印刷所ではなく発行所。出版社など)
  4. 発行年(改訂された文献の場合は、改訂された年と第何版かを書く)
  5. その文章の総ページ数と、引用したときはその引用したページ番号

・書誌事項の記載順序(歴史学の場合の一例)

筆者名 (発行年) 「論文名」 論文ページの範囲 編者名 『書籍名』 発行所 書籍ページ数

(例)亀井正道 (1988年)「海と川の祭り」pp.25-33 小田富士雄・編 『古代を考える 沖ノ島と古代祭祀』 吉川弘文館 245ページ

・「pp.」複数ページを表し、何ページから何ページまでという意味。「p.」は単数ページを表し、1ページだけを引用する場合などに用いる。書籍全体の総ページ数は「●●●ページ」の表記でOK。

・編者名は省くという人もいる。また、雑誌の場合は編者・発行所名を省く人がほとんど。このあたりの記載方法は慣例的なもので、たとえば小田富士雄・編のほかに、小田富士雄編とする人や、小田富士雄(編)とする人もいて、人によってけっこう違う。

・シリーズものの書籍(第1巻・第2巻…など)があるが、そういう時は下のように記載することが多い。『八日市市史 第1巻 古代』とする人もいる。

(例)丸山竜平 (1983年) 「蒲生野の古代信仰」 八日市市史編さん委員会・編 『古代』(八日市市史 第1巻) 八日市市役所

・本文中で他の人の考えを書く場合は、必ず参考文献を明示する。しかし本文中で書誌事項を全部書くと長くなるので、本文中では「亀井(1988年)」などと表記して、参考文献に全部の書誌情報を載せる。発行年の( )を外す人や、「年」を書かない人もいて、どれもアリ。

・インターネットに載っている情報は、「オンライン文献」として扱われる。オンライン文献の書誌情報の書きかたも複数の流儀があるが、一例を下に掲載。

作者名 「ページのタイトル」 URL (閲覧日)

(例)吉川宗明「私が考古学で学んだこと。そして、考古学と違う道に進んだ理由(長野県宮崎遺跡の発掘の思い出から)」https://www.megalithmury.com/2020/12/koukogaku.html(2021年8月5日閲覧)

※インターネットページでは作者名が特定できないことも多いので、その場合は書かなくて良い。ペンネーム、ハンドルネームが書いてあればそれを書く。


【中級編】注の書きかた


最後に「注」の書きかたについて紹介します。本文とは別に、原稿の余白に書く補足説明のことで、「註」や「注記」ともいいます。

いわゆる高校、大学入試の小論文においては注を使うことはほとんど必要ありませんが、大学で各論文やレポートとなると、使いこなしておきたいルールです。

注の書式も、いくつものパターンがあります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるので、自分がやりやすいと思ったものを採用してみましょう(または、教授からの指定や雑誌からの指定に従う)。

  1. 論文の最後に注をまとめて掲載する・・・書き手(=あなた)が作成しやすい形式。ただし、読み手としては注が出てくるたびに最後のページまでめくらなければならず、少々煩雑となる。
  2. 各ページごとに注を載せる・・・読み手としてはすごく見やすいが、各ページごとで本文と注の比率が異なったりして、書き手はレイアウトに苦労することが多くなる。Wordでは自動的に割り振ってくれる。

注番号も、「注1・注2・注3…」「1・2・3・・・」「i・ii・iii・・・」などさまざまです。Wordで書く場合は選べますし、やはり大学側や掲載する雑誌などのルールに統一すればよいでしょう。


記事が長くなりましたが、かなり余さず紹介したつもりです。
まずは一度、最後まで書いて慣れることですね。いろんな本を読んでみて、それぞれの本の書きかたを見て、まずはマネしてみるのもオススメです。

すばらしい論文が完成するように、健闘を祈ります!

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