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高3生の実際の添削例(当教室) |
京進スクール・ワン四日市ときわ教室の教室長・吉川です。
AO入試・指定校推薦・公募制推薦などで、志望理由書や小論文が課されることもあるでしょう。
これからは新大学入試に合わせて、従来の一般入試の枠組のなかでも、自らの考えをまとまった分量で記述する力が問われる機会が増えてくるのではないでしょうか。
京進スクール・ワンでは、高校3年生の夏から(早い人は春から)、小論文対策を頑張っていく受験生が多いように思います。
当教室では、小論文が必要な受験生がいる場合、私が積極的にその添削を受けるのですが、みんなの文章を見ていると「つまずくポイント」にある程度共通点が見られます。
それを17か条にまとめてみました。
- いきなり原稿用紙に全部を書こうとする
- 一文が長い(3行以上)
- 主語が長く、述語が短い
- 逆に、主語がなく述語しかない
- 読点が少なく、息継ぎさせてくれない
- 自己推薦文なのに、志望理由を書いていて、自己を推薦できていない
- 最終段落のまとめを、強引にまとめる
- 抽象語でまとめようとする
- 接続詞が少ない
- 「どうやって」「どのように」の部分が抜けている
- 誰かの受け売りの内容を書くとき、引用であることを書いていない
- 自分が書いた文章を、1人目の読者として自分自身で読み直していない(書きっぱなし)
- 行動の後に、理由を書いていない
- 主張の後に、根拠を書いていない
- 反論できていない
- 筆者の文を要約する時は具体例にとらわれるが、自分の主張を書くときは具体例が抜ける
- 大学のリサーチ不足
この記事では、各項目の傾向とそれに対するアドバイスを、あくまでもかんたんにですが触れてみようと思います。
いきなり原稿用紙に全部を書こうとする
小中学生の作文にもあてはまる傾向ですが、思いつくままに最初から清書用の原稿用紙に書き連ねていって、思いついたものが行き詰まった瞬間に手が止まり、残りの余白をどうしようか悩む生徒さんを見かけます。
このタイプの生徒さんの場合、その後に文を無理やり付け足すので、だいたい論理的につながりが悪かったり、同じことの繰り返しになったりします。
そして、読み手(採点側)からすると、かなりの確率でこれがバレます。
「無計画」に見えるのが、減点要素になりやすいです。
アドバイスは、いきなり本番用に書かず、まずは箇条書きでもいいので、いらない紙などに思いついたネタを書き出してみましょう。
書き出したメモから、小論文に書いていく順番を決めて(いわゆる序論→本論→結論の構造で決めていく)、終わりの文字数を意識して計画的に書いていくのがおすすめです。
一文が長い(3行以上)
私も意識していないとこれをやらかすので共感・同情できるのですが、一文が長いと読者は読みにくいです。
原稿用紙でいうと3行以上が危険ゾーンです。
一つの段落すべてが一文になっているという強者も見かけます。
一度書いた文章を、もう一度読者の視点になって読み返してみてください。
文が長くて読みにくいと感じたら、その一文を二文に区切れないか、工夫してください。
原稿用紙全部を書いてからだと、修正が不可能状態になるので、一文書いたごとに自分の書いた文を見直すのがポイントです。
(途中式の検算といっしょですね)
また、そのためにも、いきなり清書として書かず、下書きしてみることです。1か条目の注意点と同じということです。
主語が長く、述語が短い
これも、意識していないと起こりがちな文章です。
文章全体を構造でとらえていきましょう。まるで英語の長文のスラッシュリーディングのように、です。
自分の書いた一文のうち、主語と述語の比率がだいたい7対3よりも大きくなったら、後ろがふん詰まりで、やや幼稚な文章に見えます。また、単純に読みにくいです。
文脈の流れもあるので一概には言えませんが、"主語より述語の方が長い"ことを意識して文を書いたら、結果的にちょうどよい文章に仕上がるのではと思います。
逆に、主語がなく述語しかない
これは、日本語の場合よくある現象です。
私のこの記事の文章ですら、主語がない文章ばかりです。
英語と違って、無理に主語を入れなくても、前後の文脈で主語は必要なくてもすむからです。
しかし、主語がない文章をいくつも連ねていくと、何について書いているのかだんだんわからなくなってきます。
「~が」「~は」など、明らかに主格となる文を入れていく必要はありません。
誰が何をしている文なのか、何がどうしている文なのか、今書いている文の「動作主」を見失わないように。
読点が少なく、息継ぎさせてくれない
2か条目の「一文が長い」と似ていますが、一文が3行未満でも、読点(、)が一つもない文章があったとしたら、高確率でその文は読みにくいでしょう。
この傾向が高い生徒さんがいたら、ぜひ「読点多用でちょうどよくなる」と思ってください。
やらなさすぎる人は、何事もやりすぎるくらいでちょうど良くなります。
自己推薦文なのに、志望理由を書いていて、自己を推薦できていない
設問に応じた答えを書きましょう、ということです。
たとえば、自己推薦文は「自分」を「おすすめ」する文です。
なのに、もし「大学に行きたい」という「気持ち」だけを書いてしまっていたら、設問とズレていますよね。
読者(採点側)としては、「この受験者、すごいから合格させたい!」と思いたいのです。
そんな自己アピールを、説得力ある例をつけて書いてほしいのです。
大学ごとで、出願書類につけるこの手の文章の設問は微妙に異なるので、機械的に同じストックの文章をあてはめようとせず、設問に応じて変えましょう。
最終段落のまとめを、強引にまとめる
冒頭、途中と読ませる文章だったのに、最後、結論が尻すぼみになる人がいます。
もったいない読後感の小論文となり、評価が今一つになりやすいです。
原因は多くの場合、最後の余白不足です。
書かないことがなさすぎ、よりは良いことなのですが、明らかにペース配分ミスです。
ペース配分も、小論文の計画性という意味で評価ポイントです。
まずは、結論となるメッセージは書く前から事前に決めておき、それは特大ネタとして最後まで取っておけると良いでしょう。思いついたからといってすぐ書くと、結論は繰り返しになって、無計画で尻すぼみの読後感になります。
そして、そのネタは何文字分(原稿用紙で言うと何行分)使うのか、正確に数える必要はありませんが把握して、逆算してそのマスを最後に用意しておくことです。
言葉で書くと難しく感じるかもしれません。また、事実、慣れないうちは難しいでしょう。
作文力、記述力、小論文力というものは、突き詰めれば文章を書いた数(アウトプット量)ですから、迷うくらいなら、悪文でもいいのでどんどん小論文の量をこなしていくことが上達の近道です。
抽象語でまとめようとする
(例)一生懸命がんばった、完璧にした、積極的にしていく など
目に見えない言葉は、読んでいる人によってふわふわした、捉えどころのない印象に見えます。
「抽象語を使わない縛り」を自分ルールに入れてみてください。
おすすめは、数値を入れてみることです。
接続詞が少ない
接続詞は、ただのメモ書きに「論理の流れ」を作り出すもので、小論文には必須の要素です。
さまざまな種類の接続詞を使いこなせる人は、読者を自分の思いどおりに結末まで連れていける名文の使い手です。
たとえば「接続詞」を今いくつ書き出すことができますか?
15個以上をすぐに書けない方は、まずは接続詞の種類を今一度調べて、リスト化して使えるようになるところから始めてみましょう。
「どうやって」「どのように」の部分が抜けている
読み手(採点側)が、小論文を読んでいて知りたいのは、どのような方法を使ったのかという「How」の部分です。
何をした、だけだと日記です。
何をどうやってしたのか、が書いてあると、そこに作者(あなた)の思考やオリジナルの部分を感じ取ることができて、高評価です。
読者が喜ぶことを作家の気分で想像して、それをもったいぶらずに、逃げずに、盛り込んでいきましょう。
誰かの受け売りの内容を書くとき、引用であることを書いていない
基本的に、小論文は自分の考えだけ書かず、他の人が書いた文章や調査・研究・データをどんどん書き加えていった方が説得力を増します。
論文には、科学的に証明できる納得性が必要です。
そこのあるなしが、感想文(作文)と論文の違いと言い換えても良いでしょう。
そのためにも、小論文でよく出るテーマについて日頃から勉強と思わずいろんなメディアから情報を吸収して、小論文で根拠に使えそうな知識を蓄えておくことです。
繰り返しますが、勉強と思わず教養だと思って、楽しんで知識を吸収することが、本番ですっと引き出しから出せる秘訣になります。
また、ここでは詳しく触れませんが、引用のルールについても再度勉強しておきましょう。
意図的でなくても、さも自分が調べたかのように書いてしまうと大減点です。主語がはっきりしない書き方には、気をつけましょう。
自分が書いた文章を、1人目の読者として自分自身で読み直していない(書きっぱなし)
別の項目でも先述したので繰り返しになりますが、小論文とは自分が書いて自己満足で終わるものではなく、必ず読み手がいます。
その読み手の立場に一度立ってみることです。つまり、あなたの文章の最初の読者を、あなたが務めることをおすすめします。
「国語の文章問題で、こんな文章が出たらどう思うだろう?」という気持ちで読んでみてください。真摯に向き合えば、こんな文章では恥ずかしい、我慢できないと感じ、改善したくなるはず。
行動の後に、理由を書いていない
「○○をしました」と書いたら、「なぜなら~だからです」と、その理由をすぐ加えましょう。
この2つは1セット、と覚えておくことです。
主張の後に、根拠を書いていない
先ほどと同じ。1セットで書くように。
反論できていない
(例)「たしかに~である。しかし、○○だ」と書いたのに、○○の論理が弱い。
小論文対策について書かれた参考書などを読むと、時折このような、設問や通説、引用した説への反証を加えることを推奨することがあります。
「たしかに~だが」と、譲歩的に使うのもテクニックですね。
うまく使いこなせれば効果的ですが、往々にしてよくあるのが、その反証が設問・通説・引用者の説に対して脆弱という問題です。
原因の多くは単純に知識不足です。
つまり、このテクニックは上級者向けということ。
安易に使って大やけどするよりは、他の16か条を優先的に改善するほうをおすすめします。
筆者の文を要約する時は具体例にとらわれるが、自分の主張を書くときは具体例が抜ける
不思議というべきか、自然というべきか、他人の文章を要約する時は具体例にとらわれてまとめてしまうのに、自分のオリジナル主張の時は具体例を用意しきれず、抽象的で主観的な気持ちに終始しがちです。
要約力が試されています。
つまり、具体例を省き、結局どういうことを言っているのかをずばり抜き出す力。
「たとえ」や「比喩」の部分を見つけて、しるしをつけたり囲んだりしてみてください。
予想以上に、筆者の文章の多くの文章がたとえや比喩でくくれます。
残った部分が、そぎ落とされた「要約すべき部分」です。
各段落で、一文くらいはそういう箇所があるのでは、という気持ちで見つけていきましょう。
(段落全体がたとえ、比喩なんてこともざらにあるので注意ですが、意識面でということです)
大学のリサーチ不足
大学入試における小論文の場合、読み手は大学教員です。
大学側は、無意味に小論文の問題を作りません。
教員の興味関心や専門分野に偏ることは当然ありますが、もう少し大きな視点で考えるならば、大学の小論文は大学のアドミッションポリシーに基づいて課されるという仮説を立ててみても良いでしょう。
小論文をどう書くかという方向性が決まらない時は、大学のパンフレットやホームページを見て、大学のアドミッションポリシーを参考にしてみてください。
どんな学生を受け入れたいのか、相手(=大学)がどう思っているのか、という意図を知ることは、入試のテクニックのみならず、他者理解としてやってみても良いのではないでしょうか。
最後に
長くなりましたね。
すべてを読んだ方がおられたら、読解の忍耐力はバッチリだと思います(笑)
ここに書いたことはすべて「言うは易し、行うは難し」です。
私自身の文章も、この弱点17か条に当てはまるものもあるでしょう。
採点側の教員ですら、そのようなものかもしれません。
文章を読む側、というのはそれだけ「強い立場」です。
そのような読者に対して、配慮をしすぎてしすぎることはありません。
いろいろ書きましたが、ぜひ、読者の立場に立つ工夫や取り組みを、ぜひ自分のこれからの小論文練習に取り入れていってくださいね。
関連記事(小論文の書式を知りたい方はこちら)
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