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学力とは? ~ただ暗記していても結果が出ない・・・そんな時に知っておきたい知識~

2025年3月25日火曜日

ごあいさつ 勉強方法

t f B! P L
この記事には、教室長吉川の指導方針の素となる話をつめこみました。皆様お一人お一人になかなかお伝えする機会をとれませんが、学力向上を真剣に叶えたいなら見逃せない情報を、あまさず書ききったと思います。
吉川の脳内の自己紹介を兼ねて、皆様に何度でも読み直していただけるような内容になっていれば光栄です。
※本記事は、過去の教室通信の内容を再編したものです。

学力を支える3つの視点

教室長は学力を下の3つの視点で考えていて、生徒さんによってどこが長じていてどこがボトルネックになっているかを見ています。
1つ1つの視点は私のオリジナルではなく、すでに専門家の方が書籍で発表しているものです。


  • ウィルパワー … ロイ・バウマイスター『意志力の科学』(2013年発表)
  • GRIT(グリット) … アンジェラ・ダックワース『やり抜く力GRIT』(2016年発表)
  • 接地力(せっちりょく) … 今井むつみ『学力喪失』(2024年発表)

造語ではイメージしにくい場合、このように置き換えても良いでしょう。


どれが欠けても学力向上につながらないので、三角形のバランスが大事です。

まずは原動力となる「最初に始める力」(ウィルパワー)が欲しいですが、そのウィルパワーが不足している生徒さんが多いことに触れなければなりません。

ウィルパワー(意志力)

やる気を出せとか強い意志を持てとか、そんな根性論ではありません。

ウィルパワーは、「今から何をするか決めるとき」や「どちらにするか選ぶとき」など、意思を必要とするときに消耗する力です。

この力は「消耗するもの」だと考えること自体が、従来になかった斬新な視点でした。

私たちは、朝起きてから、「眠いけど今起きるかどうしようか」「水を飲もうかなお茶にしようかな」「今日着ていく服はどれにしよう」など、小さな決断や選択を数えきれないほどしています。人は1日に約35000回、何かを無意識に決断しているという説もあります。

Apple創業者のスティーブ・ジョブズが毎日同じ服を着ていたことは有名なエピソードですが、これはウィルパワーが消耗されることを経験的に知っていて、優先順位が低いことにウィルパワーを使わないようにした、本当に大事な局面でウィルパワーを注ぎ込めるようにした事例として知られています。

ここで学生の1日をふりかえってみましょう。
朝の支度、昼の学校、夕方の部活の中で無数の選択・決断をしています。すると、1日の終わりにはウィルパワーが底をついてきます。そんな夜中、「帰ったら宿題するか」「今日こそ復習するか」といった、自分にとって大事な決断をしようとしてもウィルパワーがたらず、結果、今日はしないというメカニズムになります。

だから、ウィルパワーはなるべく温存することが大事という発想でいてください。

下に「ウィルパワー12か条」をまとめました。詳しいことを知りたい方はバウマイスター氏『意志力の科学』を読むのも良いですが、訳書は日本語が難しいので、スマホで検索するだけでも良質な記事にたくさん出会えます。

  1. ウィルパワーは筋肉と同じ。意志を使うと疲労するし、休めば回復する。
  2. ウィルパワーの1日のエネルギー量には限りがある。
  3. ウィルパワーが減ると、その後は快楽や誘惑につられるようになる。
  4. 1日の終わりに大事なことをしたいなら、ウィルパワーを温存しておく。
  5. ウィルパワーの1日のエネルギー量は、訓練すれば増やせる。
  6. 自分が決めたことや書いたことを、友人や身の回りに公開すると良い。
  7. 計画は立てるだけでも効果がある。
  8. 快楽や誘惑は、「絶対やめる」でなく、「後でやろう」の発想で止める。
  9. 何かをする時は、それ以外のことをしない。先延ばしもしない。
  10. ウィルパワーをうまく使えると、色んな面で自分をコントロールできる。
  11. とにかく記録をこまめにつける。
  12. 一気にやるより、こつこつ続ける方が、習慣になってウィルパワー節約。

ストレスなく行動を起こすためのアイデア

最初のやる気が出ないから結局行動に移せないという人ほど、ウィルパワーの貯めかたを真剣に考えましょう。

毎回、自分の心の中だけで「あれをしようかどうか」と悪戦苦闘しなければいいのです。
私からのアドバイスは ” 自分の中だけで悶々と考えない。周りを巻き込む! ” というアイデアです。
ウィルパワー第6条の「自分が決めたことや書いたことを、友人や身の回りに公開すると良い」に通じる話です。
そのためには第11条「とにかく記録をこまめにつける」ことも不可欠です。

なぜなら、自分が考えていること(心の中)は周りの人が見える形にしないと伝わらないからです。
そこで、文字や文章にして周りに見せます。口頭だけでは後日記憶から抜けるので、何度でも思い出せる文字の形にしてください。

そのツールが、京進で作っているリーチング学習手帳です。
自分がやると決めたことを、それ以降はいちいち自分で思い出さなくても手帳、そして京進の先生という外部メモリーに託せます。
そうすれば、自分のウィルパワーは温存できて目の前の勉強に力を注げます。

そのために講師の先生も手帳の活用指導に力を入れますが、生徒さん本人も手帳を「自分ごと」として活用していく感受性は欲しいです。手帳を渡して目標を書くまでのリアクション(感受性)にも差は出ます。

同様に、自分の部屋で誰にも見せず勉強するより、教室自習や公共空間で他人がいる中で勉強するほうが、環境の力を借りて自分を動かせるのでウィルパワーの節約につながります。
家庭学習で勉強しているノートや問題集の状態を隠さずに周りの人に見せにいくことや、問題を解く時にどんどん書き込みを入れていくことも、自分の中だけでこれでいいのか?と自問自答の末に疲弊するより、外部環境に身をさらすことで自分を高めていけるでしょう。

GRIT(やり抜く力)

GRIT(グリット)は下の4単語の頭文字をとった造語で、アメリカの心理学者が提唱しました。日本語に訳すと「やり抜く力」という意味です。


これは、知能テストなどでは数値化できない「非認知能力」の1つといわれています。

グリットの良いところは、環境や才能、それこそ頭の良しあしなどはまったく関係なく、どんな人でも自分で伸ばすことができる能力とされているところです。

2020年、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)がGRITを数値化するという実験をおこないました(『JST news』2020年6月号)。
その結果、

  • 目標がおおざっぱ(入試までがんばる、とか)だと、やり抜けない。
  • 小さな目標にして、小さい達成をすると、その連続でやり抜ける。
  • 目標の細分化をしていくと、脳の構造が変わる(!!)

ということがわかりました。

大昔、当教室の教室通信で「ゲーミフィケーション理論(ゲームのように勉強を楽しむ)」を特集したことがありますが、そこでも「小さなごほうび達成(スマホゲーのログインサービスなど)」がゲームを続ける中毒性につながることを紹介しました。

京進の場合は、リーチング学習手帳の毎日のルーティン目標が「小さな目標」で、そこに小さな報酬を加えることが重要でしょう。

GRITは、昔からある日本語で平たく言うなら「忍耐力」「持久力」といった言葉に近いです。
ガマンするために必要なのは、その人の根性といった漠然としたものではなく、体力と時間の余裕があるかどうかだと思います。

京都経済短期大学の田村輝之先生は、グリットを伸ばすために「人生において、使える時間とエネルギーは限られている」から、引き算の発想を大事にせよとアドバイスしています。詳しくは下のリンク先のpdfをご覧ください。

(田村輝之「グリット(やり抜く力)をのばそう ―人生における大切な力――」

ウィルパワーの考え方と似ていますね。
忍耐力=余力です。その点で、予定をカツカツに入れた毎日はお薦めしません。
引き算の先にGRITが生まれます。

やり抜いて習慣にするためには「土台づくり」が必要

脳科学的には、一度始めた新しい取り組みは習慣になるまで平均66日かかるという実験があります(池谷裕二教授による)。

この66日間、つまり2か月強の期間にやり抜くことをジャマする阻害原因を撲滅する必要があるでしょう。私からは2つの土台づくりをお薦めします。

1つ目は、睡眠時間の安定です。初歩的と言われればそのとおりですが、これは学習塾の先生なら誰でも感じたことがある阻害要因です。
他塾で恐縮ですが、愛知県のさくら個別指導学院塾長の國立拓治先生も「睡眠不足はすべての敵」「生活リズムは親が死守」と、親ができる学習サポートの最重要事項に掲げています(『小学生のうちに身につけたい!「勉強」のキホン』2019年より)。

睡魔に襲われた人には何を言っても頭の中に入ってきませんし、体内時計と生活リズムが狂っている状態で習慣リズムを確立するのは矛盾の塊でしょう。



対策としては、長い睡眠時間を確保することはもちろんのこと、それに加えて、就寝時間と起床時間のリズムを安定することです。
特に「就寝時間」を揃えると、体内時計が整うといわれています。


2つ目の土台づくりは、カレンダーどおりに動くということです。
手帳が代表格ですが、毎日いろいろなことがあって書ききれないなら、現代人らしくスマホのカレンダーやスケジュールアプリを使うこともおすすめします。

教室長はGoogleカレンダー1つで15年仕事してきました。紙と違って予定変更もしやすく、毎日・毎週・毎月・毎年繰り返しの設定なども簡単です。予定を覚えつづけること自体に頭を使わなくてよくなるので楽です。日々、ウィルパワーを使わず、確実にやり抜くことができるようになります。

この時、1つ1つのやることはできる限り「具体的にすること」(=to do)に細分化してください!

GRITの2020年の実験で明らかになったとおり、おおざっぱな目標ではやり抜けず、小さく細かな「to do」にすることでやり抜けます。
「勉強する」ではなく、「●●の後に机に向かう」くらいの「to do」を通知してもらうといいでしょう。


いま何をしたら良くて、次に何をすればいいのかを、その時その時いちいち判断していたら、情報化社会でやることが多い現代人はあっという間に疲弊します。そんな日々ではやり抜けないでしょう。

息を吸うように、感情の入る余地なく、無心で動くことが習慣化の要です。

その意味で、「素直さ」を持った人が習慣化に一番近い人と言えます。

接地力(身体化力)

最後の視点です。始める力、やり抜く力があっても、肝心の覚え方(学習のしかた)が良くないと、学力向上にはつながりません。

心理学者の今井むつみ氏は、学力を伸ばすためには「習ったことを死んだ知識にせず、生きた知識にしていくこと」が大事ということを提唱しました。

  • 習ったことを、できるかぎり自分の生活経験に紐づける。
  • 何となくわかりかけた知識を、何度も使って身体の一部のようになじませる。
  • 自分勝手に誤解していないか注意しつつ、習ったことの意味を問い続ける。

つまり、勉強の知識を遠い世界の自分と関係ないこととしておかず、自分の日常生活に関係あることとしてくっつけて(=接地)、自分の体になじむまでそのことに向き合い続ける(=身体化)という力です。

教室では毎週生徒向けのクイズを作っていますが(教室インスタで時々投稿しています)、ア~エの4択のどれなのか答えだけ知りたがる生徒さんと、どうしてその答えになるのかまで好奇心をもって会話が続く生徒さんがいます。
一種の感受性の差と言えますが、これは生徒本人がそうできない場合、身の回りの大人がそのように導いていくことが学力喪失を防ぐと今井氏は述べており、私たち講師陣もそのような授業ができるか、突き付けられた問いです。

具体的な身体化の方法は、脳科学学習法が教えてくれています。
いくつか例を掲載します。



脳の海馬は、約1ヶ月かけて、その知識をずっと記憶するか忘れていいかを判断します。
1ヶ月に4回くらい接した知識は、脳が大事と判断して長期記憶してくれるというヒトの仕組みがあります。

勉強時間の時だけ勉強のことを思い出す子は、あまり伸びません。成績上位者は勉強時間以外の登下校時や入浴時などにも思い出しています。
そこまで生活面に勉強の知識をなじませていけると、長期記憶できるようになるでしょう。


脳科学学習法の基本的な方針は、自分の記憶を信じず疑うことです。
その点で、自己批判力が求められます。自己批判にはエネルギーが必要です。本記事で紹介した方法で余力を確保しましょう。

「勉強」はそこが整ってスタート地点に立てたと言えます。

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京進の個別指導 スクール・ワン四日市ときわ教室
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教室長:吉川(よしかわ)
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